小川研究室
  第2回目の研究室訪問は、小川研究室です。人と動物の関係を中心に、バラエティに富んだ研究を行なっています。(2004年5月取材)


    

写真:小川研究室の様子


小川 家資 助教授

Ph.D.

専門分野:動物人間関係工学

 東海大学工学部卒業後、東海大学大学院に進学。後に カナダ・ウィンザー大学大学院博士課程インダストリアル・エンジニアリング専攻。


 私の専門分野は、動物人間関係工学です。動物介在活動などが人へ及ぼす効果と、動物の行動や動きを私たちの健康に利用できないか、ということを研究の対象にしています。特に後者が人間に与える効果をどう測定し、数字で表すかが目標です。たとえばロボットの動きを見ると、そこに動物の動きを取り入れています。これはペットロボットだけではなく、産業などで使われるロボットにも、本物の動物の体の構造や動きが応用されています。

 現在、職場におけるストレスとペットの関係について調べています。8人の被験者に、仕事の前後に休憩時間を設け、ペットと遊ぶ場合、本を読む場合、ペット型ロボットで遊ぶ場合で比較すると、ペットと過ごす場合が一番リラックスできるようです。もちろん、これは動物好きな被験者である事も関係しているでしょうが、これが読書になるとあまり良い効果がでないのが不思議です。

 また、二年位前の学会では、創造的な仕事と休憩時間の使い方について発表しています。まだ詳しい理由はわかりませんが、休憩時間にペットと遊んだ後、創造的な仕事をやらせると普段より「やる気」が出るようです。これは脳波測定の結果からもわかっています。また、そのときの気分についてアンケートをとった結果、ペットと一緒にいるほうが、生き生きするという回答が多いことがわかりました。

 今までは人間の睡眠や覚醒について、人間は睡眠を何時間取るのがいいかなど研究してきました。本年度のアニマルサイエンス実習では、自分の睡眠と飼っている動物の睡眠のパターンが同調しているという結果を報告しているグループがありました。散歩以外に運動をしないペットは、散歩のときにだけ活動レベルがあがります。データを長期間取れば興味深いデータが集まるでしょう。

 また、馬についても研究することはいろいろあります。馬に乗ると歩行姿勢が変わります。歩行姿勢が変わることをどうやって測定するかは難しいところですが、実習で行なった乗馬シミュレータによる測定では、その効果がきれいに出た女子学生がいました。乗る前は猫背だったのに、騎乗後には背筋が伸びてまっすぐになりました。このことを科学的に追求しようと考えています。さらに筋電図を使って、乗馬中はどこの筋肉を使うのかも調べる予定です。

 現在2人の卒研生が、防衛医科大でロボットを用いたロボット介在活動と、コンパニオンアニマルを用いた動物介在活動とを比較する研究をしています。犬の車椅子の効果や、車椅子使用時の犬のバランスの変化についての研究をしようとしている学生もいます。あるいは、ペットビジネス、また多頭飼育について日本とアメリカの違いなどを調べている学生もいます。

 まとめるのは大変ですが、バラエティーに富んでいて楽しいです。(インタビュー:たかたか・真基・千尋)


写真:愛犬ハルくんと

小川研究室 四年生

望月 雄一郎さん

ドッグトレーナー研究部、動物介在活動部、牧場研究部 所属

多頭飼育のボランティア、AAE(動物介在教育)にも参加

 卒業研究のテーマは、「山梨県内における去勢避妊の実態調査」です。この研究のきっかけは、愛犬のハルが里親会の出身で、未だに減らない殺処分の数を少しでも減らせたら、と思ったことでした。今は、現時点の去勢避妊を行っているところのアンケート調査や事前調査を行っています。

 これからは、周囲で犬を飼っている知り合い約30人を対象に行われた試験的なアンケートをもとにして、6月25日までに本調査のアンケートを作成し、研究室のゼミで発表したものに手直しを加えてから、サンプル数1000を目標に調査を始める予定です。アンケートの対象は、一般の飼い主はもちろんのこと、獣医やペットショップ店員にも協力してもらいたいと考えています。アンケートの配布は甲府市をはじめとして山梨県内や自分の地元の公園などで散歩している人、家の外で犬を飼っている人に行います。

 また、啓蒙活動も視野に入れています。アンケート用紙と一緒に去勢避妊についての冊子も配布して、一般の飼い主の意識改善ができたらと思っていますので、そのための冊子も作成するつもりです。

 それから、不妊治療についても調べています。動物が病気にならないことを一番に考えると、不妊治療は発情前が適当だと考えていますが、早期不妊については人それぞれ考え方が異なるので、これからさらにまとめていきたいと思っています。また、各市町村で出している去勢避妊手術の助成金についての調査も行っています。まだ助成金がないところもありますが、あっても住民に知られていないことも多いので、住民課や生活環境課にアナウンスを呼びかけたり、一般飼い主の情報源である獣医やペットショップでも去勢避妊のメリットだけでなく助成金の情報も、狂犬病予防接種のときなどを利用してアナウンスをしてもらいたいと考えています。

(インタビュー:ふーちゃん・亜樹)


小川研究室 大学院理工学研究科 修士課程

経営情報システム専攻 二年生

坪井倫也さん

 小学校低学年の言語学習に、動物の介在が及ぼす効果について研究しようと思っています。卒業研究では、休憩中におけるヒトの脳波の測定を行いました。被験者には休憩中に読書や犬とのふれあいをしてもらい、そのときの脳波を測定しました。この続きで、「オフィスドッグ」の研究をしようと考えていました。

 「オフィスドッグ」とは、仕事場にいて、仕事をスムーズにする潤滑剤の役目を果たす事を期待されるイヌです。オフィスでの仕事は、(昼休みを除いて)休憩と労働の明確な区別がない事が多く、労働者は自分のリズムで仕事をしています。一つの仕事を、朝から夕方まで行っている環境へ動物を導入する事が、仕事のパフォーマンス、達成率をどう変化させるか調べてみようと思っていました。

 ところが小川先生に見せて頂いた英文雑誌によると、子供が動物に本を読んであげるという行為が子供の学習能力を上昇させる、という報告が掲載されていました。この研究はあまりされていないようですので、今後は一気に年齢を下げて、子供について研究しようかと考えているところです。

 私は今心拍に一番関心があります。人が集中しているかいないかなどは、心拍で分かってしまいます。

 例えば、子供は弟や妹に本を読んであげるときは、集中しているものですが、兄弟のない子供でも、動物に話しかけることで集中する事ができ、効率的な言語学習につながります。また、人目を気にして緊張してしまう子供にとっては、動物は間違えても怒ったりからかったりしない、素直に聞いてくれる存在であり、集中して楽しく学習ができる、得がたいパートナーになるでしょう。

 今後は友達や研究室の学生、知り合いの親戚などに頼んで夏休みに集中的に研究をしてみようと思っています。

 私は経営情報システム専攻なので、動物側というよりは人間について、パフォーマンスなどを見つつ研究していきたいと考えています。

(インタビュー:ゆーじ・ふーちゃん)

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