花園研究室
 動物の神経について研究されている、内藤先生の研究室を訪問しました。(2004年11月取材)


内藤順平 教授

医学博士

専門分野:神経形態学、神経発生学

 東京農工大学農学部獣医学科卒業、同大学農学研究科修士課程獣医学修了、岩手医科大学医学部講師、名古屋大学院生命農学研究科助教授、2002年帝京科学大学教授就任。医学博士。


 私は「脳」が専門で、脳の神経回路や神経細胞の形、配列を調べています。方法としては、神経軸索トレーサー法や免疫組織化学法を使って、主にラットやヒヨコの脳の神経細胞を一個一個染め出し、それぞれの活動について調べています。その一つとして、共焦点レーザー顕微鏡という特殊な顕微鏡を使って、ヒヨコの網膜をコンピュータ上で縦や横に切って神経細胞の樹状突起の層構造を解析し、明るい時や暗い時に働く「オンニューロン」「オフニューロン」の働きについて調べています。その結果、鳥類の優れた視覚能力がいろいろと分かってきました。

 また最近では、「動物の神経精神活動」「神経回路」をキーワードに動物の行動と脳波の関連性についても研究しています。例えば、出産間もない親子のラットを透明な仕切りで区切った箱に一時的に離れ離れになるように入れ、お互いに見えるけど行けないという状況を作り出します。その時の母ラットの脳波には通常の時とどのような違いが出るか、また学習中のラットの脳波はどう変わるかという事を卒研生と研究しています。


内藤研究室四年

折笠まなみさん

 ラットの脳波を測定して、動物にも葛藤はあるのか、それが脳波に表れるのかを研究しています。動物にあるストレスを作った場合、脳波はどうなっているかを見ます。ラットの親と子を、同じケージの中に仕切りをして、親は子が見えていて匂いもするのに側に行けない状態にして、親にある種の心理状態(葛藤・不安など)を作り出し、親の脳波をコンピュータで測定・解析します。これにより、動物の親子の絆を探ろうとしています。

 人間がリラックスしている時に表れるα波は、ラットでも休息中やグルーミング中に見られますが、人間と動物の脳波は同じであるかどうかはまだ解明されていないので、この実験でラットから独特の脳波を見つけて、それが葛藤(ストレス)を表すものだという事を解明したいので、今は多くのデータを集めています。

 将来はこの実験経験を活かして、動物看護師か動物実験関係の仕事に携わりたいと考えています。


内藤研究室四年

青木裕理さん(右)

大谷嘉子さん(左)

 ヒヨコを用いて、網膜にある神経節細胞について研究しています。ヒヨコを調べる理由は、鳥は目がとても発達しているからです。人間は中心野(黄斑部)が1つですが、空を飛ぶある種の鳥は2つあり、はっきり見える部分が同時に2つあります。前を見て空中を飛びながら、下の川にいる魚を見つける事ができるように、1つは警戒、1つは餌探しというように使います。でも嗅覚や聴覚よりも視覚に頼っているので、「鳥目(=夜盲症)」というように、暗い所では身動きが取れない種もあります。鳥の眼を覆うとおとなしくなるのはそのためです。

 網膜神経節細胞は網膜上に映った映像の情報を脳へ伝える役割を担っています。この細胞の全体像を明らかにしたいと思っています。神経節細胞の全体像は現在の神経科学でも見ることは大変難しいのです。これを調べるために、先端が直径1μm(1/1000mm)の細いガラス管をこの細胞に刺して、蛍光色素で細胞内染色をします。また同時にこの神経節細胞が脳のどこへ軸索を伸ばしているのかも免疫組織化学の手法を使って調べています。


内藤研究室四年

袴田智治さん

 私は環境ホルモンや薬物が与える影響というテーマで3つの試薬を使って研究しています。

 1つ目は、現在問題になっている「シックハウス症候群」に関連していて、「ホルムアルデヒド」を充満させたケースの中にマウスを入れ、毎日14分ずつ4日、8日、12日、2ヶ月間投与しつづけます。その後、肝臓・腎臓・胃・肺といった臓器を取り出し、ホルムアルデヒドがどのような影響を与えているかを調べています。

 2つ目は「DDT」という、農薬や除草剤、殺虫剤に含まれている物質を用いて、粉末のDDTを餌に混ぜて数日間与えて実験します。これはコンパニオンアニマルよりも、畑の作物を食べる野生動物に影響があるのではないかと思われます。

 3つ目は、「ビスフェノールA」という物質を使って実験しています。これは、家庭から流れ出た水が海へたどり着いた時にそこにいた貝がメス化するといった問題に関係しています。また、プラスチックやトレーを温めたときにも発生してしまうので、人にも影響があるのではないかと思われます。これも粉末のものを餌に混ぜ、その後臓器や生殖器を調べます。この研究でペットの餌の容器に温かいものを入れた時にどのような影響が出るかが分かってきています。

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