本好研究室
 馬学を専門にされている本好先生の研究室を訪問しました。(12/12更新)


本好茂一 教授

農学博士・獣医師

専門分野:臨床獣医学・馬学・ペット栄養学

日本大学農学部卒業後、東京大学農学部研究生、同大助教授を経て日本獣医畜産大学教授、同大付属病院長、同大名誉教授となる。2005年4月、帝京科学大学教授に就任。

認定NPO RDAJapan理事長

NPO 介助犬アカデミー副理事長


 私は獣医師です。これまで獣医学の教育に携わって来ました。大学を出てからは、初めは獣医外科学を学び、その後大学の付属牧場に行き、牛・馬・豚・鶏などの予防治療を行ってきました。その後は内科学に所属し、産業動物学にかかわってきました。私はこの産業動物に関する学問である産業動物獣医療を専門としています。

 日本の今までの産業動物の獣医療は個体診察という形が中心に国の保険制度で守られてきました。しかし、例えば同じ牧場にいて同じエサを食べさせていると、似たような病気がいくつも発生してきてしまいます。そうすると個体診療では間に合わなくなるため、群に対する予防ということを含めた獣医療を進めていかなければなりません。現在の日本の大学で行われている獣医療教育は、個体診療を中心にしているので、まずは大学での教育を変えていかなければなりません。これについては、プロダクションメディスンと呼ばれる、生産をする動物に対する医療である生産獣医療という学問があり、1985年を境にアメリカで広がってきました。例えば牛の搾乳をする際には、搾乳機を当てる前に乳房の消毒をするのですが、アメリカでは消毒液を一本ずつそれぞれの乳房につけ一つ一つを拭いているために、集団での乳病にはかかりにくいのです。しかし、日本でも乳房を一つずつ消毒しますが、同じ消毒液を一つの雑巾で拭いてしまうために、一つの乳頭が乳房炎にかかっていると全乳頭が病気に感染してしまいます。こういったことから、生産獣医療の認識を取り入れていかないと日本の獣医療も変わらないということで、日本でも取り入れ始めました。その結果として日本の産業動物学は変わってきました。今後も日本の学問体系が時代にあったものになって欲しいと思っています。

 現在はRDAJapanで障害者乗馬を、ペットの栄養に関してペット栄養学会で、また、介助犬に関しては介助犬アカデミーでそれぞれ活動をしています。また最近は自分が何かを研究するというよりも、研究者を育てることをしています。

 今いるこの大学は、獣医や畜産関連の学校がやらない場所をやっているし、すごく柔軟で驚きます。また学生の反応がいいため、やりがいを持って教えています


本好研究室 四年生

林 聖美さん

 私は馬の調教者の調教時の心拍数の変化を調べています。

 調馬索による調教があるのですが、調教者と馬との相性などによりやりやすい馬とやりにくい馬がいます。調馬索とは、円の中心に調教者が立って、馬の速さを常歩・速歩・駆歩とコントロールしながら運動する調教法です。どのように馬を歩かせたり走らせたりするかというと、調教者の気持ち次第だと思います。長いロープを持っていますが馬は非常に頭がよく、人の気持ちをよく察するため、上手い人は声を一切使わず想うように操ることが出来ます。

 人が「走ってくれ!」と思えば思うほど、心理状態が高まるため調教者の心拍数は上がります。調教しやすい馬とやりにくい馬の2頭で、調教している時の調教者の心拍数に違いが生ずるかどうか研究しています。

 調教しやすい馬は、人の気持ちを理解してくれてコミュニケーションがとりやすく、調教は安定していますが、やりにくい馬は調教者のいうことを理解してもらえず、納得のいかない調教の仕方だと暴走されてしまいます。そのため調馬索は、調教者にとって大変重要なので声でなくハートで伝え、馬が人を感じてくれるのです。初心者ではいうことを聞いてくれず、調教者もそうとうな努力が必要なのです。

 調教者に24時間計6日間ホルター心電図を取り付けて、普段の生活と調教をしている時の心拍数を比べます。やはり調教している時、馬が速く走っている際には本人が運動しているのと同様に心拍数が上がっているのでそれを証明したいと考えています。


本好研究室 四年生

小野 雄二さん

 馬の問題行動についての調査・研究をしています。実際に山梨の乗馬クラブに行き、馬の体調などにも関わってくるような問題行動を調べています。

 馬の問題行動とは馬房内で馬が外に出ないようにする棒を噛んだり、それがひどくなって空中を噛んで空気を飲んだり、首を揺らすなどがあります。空気を飲むと胃や腸に空気が溜まり、腹痛につながったり、首を揺らすことで足の筋肉に悪い影響が出たりするので問題行動とされています。

 馬房内では馬は他にする事がないので、このような行動に移行していくのではないかと考えており、生活環境を変えることが問題行動の軽減につながらないかを調査しています。乗馬クラブ等でアンケートをとることを第一段階とし、その結果から厩務員の性別を変えたり、えさの与え方を変えたりしてみたいと考えています。実際に厩務員を男性から女性に変えると問題行動が減った例もあります。馬のストレス軽減に向けて研究を進めていきたいと思っています。

Copyright(c) 2005 Neconome Hodobu All rights reserved.