森研究室
 研究室訪問、第3回目の今回は森研究室です。森研究室では、ペンギンなどの潜水動物などを研究している森先生の指導のもと、学生達は鳥類などの野生生物を中心に研究しています。(2004年6月取材)


森 貴久 講師

理学博士

専門分野:動物行動学

 京都大学大学院理学研究科博士課程動物学専攻修了後、京都大学研修員、京都大学理学部教務補佐ののち、当学科講師となる。理学博士。

写真(下):学会に出展するパネルを見せて下さいました。


 潜水動物の採餌行動の研究を専門分野としています。肺呼吸をし、水中で餌を採る動物がどのように潜るのか、また、行動がどのような時間配分になるのかなどを調べました。三年生の授業の「動物生態学」で使用したプリントの中に私の論文から抜粋したものがあります。

 私は最初からペンギンの研究をしたいとは考えていましたが、何をすればいいのか悩んでいました。そんな時、極地研究所でペンギンにデータロガーをつけた研究を行なっているから手伝ってみないか、と言われて始めたのが潜水行動の研究を始めた経緯です。その後、いろいろな動物の潜水行動を調べています。

最近は、ウェッデルアザラシの潜水行動の研究を行いました。この研究は、七月にフィンランドで開催される国際行動生態学会(IBS)で発表します。

 この研究は、南極大陸のマクマードというところで行ないました。一般的に動物の採餌行動は、餌の量が異なれば変わるはずです。逆にいえば、行動を見れば餌の量が分かるはずです。実際に陸の生物ではそうなっています。しかし、海の生物の場合、それが本当かどうかはまだ分かっていないわけです。

 ウェッデルアザラシにカメラをつけて潜らせて写真を撮ると、たくさんの魚が写っていました。これだけたくさんの魚が写っているということは、ウェッデルアザラシの餌の密度が多いということです。このときの魚の数を勘定すると、ウェッデルアザラシが潜ったときの餌の密度が大体分かります。それとは別にそのときの潜水行動の記録を見ると、その時に餌をどれくらいとっていたかを推測することができます。そこで、表の横軸にカメラに写った餌の数、縦軸に潜水の記録の記録の形から推測される食べた餌の量をとると、横軸が多くなると縦軸も多くなる関係が分かります。きれいな一直線になるわけではありませんが、餌の密度が多くなると、食べた餌の量も多くなっていることから、ウェッデルアザラシの場合でも、潜水時の行動パターンから餌の密度を推定することには意味があるだろうと結論付けられるわけです。

(インタビュー:ふーちゃん、千尋)


森研究室 四年生

中野 裕介さん

ビオトープ研究部・野生生物研究部・動物園研究部 所属

 自然環境の回復に関わる活動をしていきたいと思い、まず大学のビオトープの丘の下に並んでいる二つの池で、池のpHや溶存酸素量など水質を月ごとの変化を調査し、その池に生息する生物を調べています。

 この池では現在まで、ヤマアカガエル、シュレーゲルアオガエル、モリアオガエルなどのカエル、ミズカマキリなどの水生昆虫、そしてヘビや金魚などが確認されています。

 ビオトープとは、直訳すると生物が生息する場所という意味です。私はビオトープという概念を勉強し、自然を回復するための活動に繋げていきたいと思います。 

大学の駐車場の横に、石で囲まれている池と草が生い茂っている池が、隣同士に並んでいます。この二つの池は生物相が異なっています。

 石で囲まれている池には、多くのヤマアカガエルが生息していますが、もう一方には多少の産卵はあったものの、明らかに数が少ない。

 この隣り合った二つの池は、水温が明らかに異なっています。石で囲まれている池では一日の温度差が少なく、冬は一日中凍っていましたが、もう一方は朝晩は凍っても昼間は溶けていました。

 ヤマアカガエルは、凍り付いてしまう石の池によく産卵をする傾向がありました。もう一方の池に産卵をするカエルはほとんどいませんでした。

 そこで、二つの池の溶存酸素量を調べると、石の池のほうが少し多いという結果が出ました。また、草で生い茂っている、産卵の少ない池には、多くのミズカマキリが観察されました。

 以上の事から、もしかすると、カエルは溶存酸素量や捕食者の密度などの影響から、石の池だけに産卵しているのではないかと考えられました。

 ところで、この池では今までツチガエルの声や姿は見ることはできませんでしたが、先日初めて捕獲されました。このことから、生物相が年々変化してることがわかります。できれば生物相の経年変化も調べてみたいと思っています。

 研究期間があれば、最終的には自分自身でビオトープを作ってみたいですね。

(インタビュー:ふーちゃん、千尋、公美)


森研究室 四年生

川嶋 利幸さん、佐藤 奈緒さん

 牧場研究部(両者)・野生生物研究部(川嶋さんのみ) 所属

 野生動物の行動圏の調査をしています。罠を仕掛けて捕獲した野生動物に発信機をつけて逃がし、テレメトリーで追いかけながらその動物の行動範囲を調査します。

 今は五月ごろに捕獲したハクビシンとアナグマの追跡をしています。

 また、トウモロコシ畑の獣害調査も並行して行っています。畑を9等分し、獣の被害状況を調べています。畑の持ち主によると、動物はだいたい畑の中心から食べるそうです。センサーカメラを設置すると、ノラネコやテン、タヌキなどが撮影できました。

 行動追跡調査は一年を通して行っていきますが、獣害調査は今の時期しかできないため、現在はこの調査を中心に行っています。できることなら、獣害対策も考えていきたいと思っています。

Copyright(c) 2005 Neconome Hodobu All rights reserved.